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個人事業主の節税|手取りを増やす順番を7ステップで解説

個人事業主の節税で手取りを増やす7ステップ

個人事業主になって最初にぶつかるのが、お金のことです。

売上は増えているのに手元に残らない。6月に届く住民税と国民健康保険の通知を見て青ざめる。節税したほうがいいと聞くけれど、何から手をつければいいのか分からない。

このページは、そういう状態を抜け出すために書きました。個人事業主が使える節税の手段を、効果が大きい順に7つのステップに並べています。

とりあえず自分の大まかな状態を知りたい人は、こちらのシミュレーターを使ってみてください。おすすめのサービスや今必要な知識を補える書籍も表示されるようになっています。

このページを書いている人

神戸でリラクゼーションサロンを経営している個人事業主です。理学療法士として働いた後、開業しました。確定申告は自分でやっています。

税理士ではありません。 なので、個別の税務相談に答えることはできません。このページに書いてあるのは、国税庁や中小機構といった一次情報にあたって整理した内容と、自分が実際にやってみて分かったことです。

そして、まだ使っていない制度もあります。 小規模企業共済も経営セーフティ共済も、私自身は加入していません。理由は本文に書きました。制度を薦めておきながら自分では使っていない箇所について、なぜそう判断したのかも含めて正直に書いています。

誰に向けて書いているか

専業の個人事業主・フリーランスの方を主な読者として想定しています。開業したばかりの方でも、数年やっている方でも読めるようにしました。

会社員をしながら副業で開業届を出している方も、多くの部分はそのまま使えます。ただし社会保険と年金の扱いが変わります。 勤務先の健康保険に入っているので国民健康保険料の話は当てはまりませんし、iDeCoの上限額も違います。該当する章では補足を入れているので、そこを読み替えてください。

法人の方は対象外です。個人事業主と法人では使える制度も税率も違うので、ここでは完全に説明を省いています。

読む順番について

上から順に読むことをおすすめします。 7つのステップは効果が大きい順に並んでいて、しかも後ろのステップは前のステップを前提にしているからです。

とくにSTEP0とSTEP1は飛ばさないでください。ここに書いてある「所得控除と必要経費の違い」が分かっていないと、あとの章でどの制度がどこに有効なのかを判断できません。節税の情報を読んでも今ひとつ腑に落ちないという方は、たいていここの理解が抜けているはずです。

すでに青色申告をしていて、次の手を探している方は、STEP2から読んでも構いません。下のボタンから飛べます。

情報の扱いについて

このページは2026年9月時点の制度にもとづいて書いています。

税制は毎年変わります。2026年分から基礎控除が上がりましたし、2027年分からは青色申告特別控除の仕組みが変わります。少額減価償却資産の上限も2026年4月に引き上げられました。古い情報のまま動くと、損をするか、間違った処理をすることになります。

このページは制度改正のたびに更新していきます。更新日はタイトルの下に表示しているので、そこを確認してください。

そのうえで、最終的な判断はご自身でお願いします。 事業の内容や家族構成によって、使える制度も有利な選択も変わります。判断に迷う部分は、税務署の相談窓口か税理士に確認してください。税務署は無料で相談に応じてくれますし、確定申告の時期以外なら比較的すいています。

広告について

このページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。

ただし、自分が使っていないサービスや、勧める理由のないサービスは載せていません。紹介しているものについては、なぜそれを選んだのか、どういう人には向かないのかも書くようにしています。

それでは、STEP0から始めましょう。まずは「手取りがいくら残るのか」という全体像からです。

STEP0 手取りはいくら残るのか

売上は去年より増えた。なのに、手元のお金はほとんど変わっていない。

個人事業主をやっていると、一度はこの感覚に突き当たります。「税金が高すぎる」「いくら稼いでも残らない」という声が絶えないのは、気のせいではありません。会社員なら給与から自動で引かれていたものを、個人事業主は自分で全部払うことになるからです。しかも請求は、稼いだ年ではなく翌年にまとめてやってきます。

節税の話に入る前に、まずここを押さえておきましょう。何がどれだけ引かれて、最後にいくら残るのか。この全体像を持っていないと、どの対策にどれだけの効果があるのかを判断できません。

売上はぜんぶ自分のお金ではない

個人事業主の税金は、売上に対してかかるのではありません。段階的に引き算をした最後の金額に対してかかります。

まず売上から必要経費を引きます。残ったものが所得です。青色申告をしていれば、ここからさらに最大65万円を引けます。

次に、その所得から所得控除を引きます。基礎控除、社会保険料控除、扶養控除といったものです。引いたあとに残るのが課税所得で、税率がかかるのはこの金額です。

順番に図のようになります。

売上から必要経費・青色申告特別控除・所得控除を順に引いて課税所得を求める流れの図
  1. 売上 − 必要経費 = 所得
  2. 所得 − 青色申告特別控除 = 事業所得
  3. 事業所得 − 所得控除 = 課税所得
  4. 課税所得 × 税率 = 所得税

節税の手段は、この式のどこに焦点を当てるかで性質が変わります。経費を増やすのは一番上の段階、共済やiDeCoは所得控除の段階です。同じ「税金が減る」でも、狙っている場所が違う。これは後の章でも出てくるので、頭の隅に置いておいてください。

個人事業主が払うお金は5つある

個人事業主が納める所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料・個人事業税の一覧

税金だけを見ていると、負担を半分しか把握できません。実際に出ていくお金は5種類あります。

所得税は国に納める税金です。課税所得に応じて5%から45%まで段階的に上がります。これに復興特別所得税として、算出した税額の2.1%が上乗せされます。2027年分からは防衛特別所得税1%が新しく加わりますが、同時に復興特別所得税が1.1%に下がるので、上乗せの合計2.1%は当面変わりません。

住民税は住んでいる自治体に納めます。課税所得のおよそ10%に、均等割として5,000円程度が加わります。税率が一律なので、所得が低いうちは所得税より住民税のほうが高くなります。

国民健康保険料は市区町村ごとに計算式が違います。前年の所得に応じた所得割と、加入者数に応じた均等割の合計で、上限があります。これが個人事業主にとって最も重い負担になることが多いです。

国民年金保険料は所得に関係なく定額です。2026年度は月17,920円、年額215,040円。2027年度は月18,290円に上がることが決まっています。

個人事業税は都道府県に納めます。事業主控除として290万円が引かれるので、所得がそれ以下なら発生しません。税率は業種によって3%から5%です。

これに加えて、売上が1,000万円を超えた年の2年後から消費税の課税事業者になります。インボイス制度に登録している場合は、売上規模にかかわらず最初から課税事業者です。

手取りはだいたい何割残るのか

具体的な数字で見てみましょう。以下は2026年分の制度で試算した目安です。

売上税金・社会保険料手取り残る割合
300万円44.0万円166.1万円79%
500万円80.0万円270.0万円77%
700万円123.1万円366.9万円75%
1,000万円212.1万円487.9万円70%
1,500万円358.0万円692.0万円66%

前提は、単身世帯、40歳未満で介護保険分なし、青色申告特別控除65万円を適用、経費は売上の30%、国民健康保険は所得割10%と均等割5万円としています。国保は自治体によってかなり違うので、ここは幅があると思ってください。

売上から経費を引いた残りのうち、手元に残るのはおよそ8割から7割です。そして売上が増えるほど残る割合は下がります。売上300万円なら79%、1,500万円なら66%まで落ちます。

もうひとつ目につくのが、所得税より住民税と国保のほうが重いという点です。売上700万円の例だと、所得税16.2万円に対して住民税32.2万円、国保43.2万円。節税というと所得税ばかり意識しがちですが、金額が大きいのは住民税と国保です。

国民健康保険料だけは、計算のしかたが違う

ここが個人事業主のお金周りでいちばん誤解されやすいところです。

所得税と住民税は、所得控除を引いたあとの課税所得に税率をかけます。だから控除を増やせばどちらも支払う税金が減ります。

ところが国民健康保険料は違います。所得割の計算に使うのは、総所得金額等から住民税の基礎控除43万円だけを引いた金額です。社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、扶養控除、医療費控除、寄付金控除。これらはいずれも計算に入りません。

経費を増やすと、所得そのものが減るので、所得税・住民税・国保のすべてが下がります。

青色申告特別控除も、所得を計算する段階で引かれるので、3つすべてが下がります。

小規模企業共済とiDeCoは所得控除なので、所得税と住民税は下がりますが、国保は下がりません。

経営セーフティ共済は必要経費として処理するので、国保も下がります。同じ共済でも性質が違います。

手段所得税住民税国保
経費を増やす
青色申告特別控除
経営セーフティ共済
小規模企業共済×
iDeCo×
生命保険料控除×
扶養控除×

○が付いているものは所得そのものを減らす手段、×が付いているものは所得控除です。国保の計算には所得控除が入らないので、この差が生まれます。

この違いを知っているかどうかで、どの手段から着手するかが変わります。国保の負担が重い人ほど、所得控除より経費側の見直しを先にやったほうが効果的です。この記事でSTEP1を経費と青色申告に充てたのは、そういう理由からです。

なお、会社員をしながら副業で開業している方は、この章の国民健康保険の話が当てはまりません。勤務先の健康保険と厚生年金に入っているので、国保も国民年金も納めていないからです。ただし所得税と住民税は副業の所得も合算されるので、経費と青色申告特別控除が効くという点は同じです。

もうひとつ、所得税の基礎控除は2026年分から大きく変わりました。本則が62万円になり、合計所得489万円以下なら特例加算で104万円まで使えます。一方で住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれています。所得税と住民税で基礎控除の額が違う、という状態になっているので、住民税の通知を見て「思ったより高い」と感じることが増えるかもしれません。の基礎控除は43万円のまま据え置かれています。所得税と住民税で基礎控除の額が違う、という状態になっているので、住民税の通知を見て「思ったより高い」と感じることが増えるかもしれません。

いつ、いくら払うのか

個人事業主の税金と社会保険料の年間スケジュール。6月から8月に請求が集中する

個人事業主のつらさは、金額そのものより支払いのタイミングにあります。前年の実績に対して、翌年にまとめて請求が来るからです。

3月に所得税の確定申告と納付。同じ月に消費税の申告もあります。4月から国民年金保険料の新年度分が始まり、6月に住民税と国民健康保険料の通知が届きます。8月に個人事業税の第1期、そして所得税の予定納税も7月と11月にあります。

つまり6月から8月にかけて請求が集中します。しかも根拠になっているのは前年の所得なので、今年の売上が落ちていても金額は下がりません。廃業した翌年に住民税と国保の通知が届いて驚く、という話があるのはこの仕組みのせいですね。

納税資金は最初から別にしておく

ここまでを踏まえると、やるべきことがひとつ決まります。入金があった時点で、税金と社会保険料の分をよけておくことです。

割合の目安は、売上から経費を引いた金額の2割から3割。先ほどの表でいえば、売上500万円の人なら約80万円、1,000万円の人なら約210万円が年間の負担でした。月々に直すと、前者で7万円弱、後者で17万円強になります。

やり方は単純で、事業用の口座とは別に、納税用の口座をもう1つ作るだけです。売上が入ったらその場で3割を移す。これをやっていないと、6月の通知が来てから慌てて工面することになります。

売上の入金を事業用口座7割と納税用口座3割に分ける図

私は開業のときに事業用と生活用で口座を分けて、クレジットカードも別々にしました。ここまではうまくいったのですが、納税資金の見積もりが甘かったです。

初年度は、想定していたより持っていかれました。所得税は思ったほどでもなかったのに、住民税と国民健康保険料が重かったです。STEP0で書いてきたとおりの構造なのですが、実際に通知が届くまでよく分かっていなかったですね。

そのときにやったのが、毎月の積立に回していた金額を少し落とすことでした。一気に止めるのではなく、資金に余裕が出る水準まで下げて、徐々に戻していく形です。節税の話は積み増す方向ばかりが語られますが、自分の事業に合う水準まで落として調整するのも同じくらい大事だと思います。

無理な金額で始めると、結局は途中でやめることになります。この感覚は、STEP2以降で共済やiDeCoの掛金を決めるときにも活かせると思います。

「事業のお金と生活費が混ざっていて、いくら残っているか分からない」という状態なら、口座を分けるところから始めてください。この話はSTEP1で詳しく扱います。

手取りの構造が見えたところで、次は実際に手を動かす段階に入ります。最初に着手すべきは経費と青色申告です。効果が最も大きく、しかも所得税・住民税・国保のすべてに効果的。ここより先に来るものはありません。

STEP1 経費と青色申告を整える

節税をする時はここから整えていきましょう。理由はSTEP0で見たとおりで、経費と青色申告特別控除は、所得を計算する段階で引かれるからです。所得税も住民税も国民健康保険料も、すべてこの金額をもとに決まります。

共済やiDeCoは所得控除なので、国保には意味がありません。3つすべてに効果的なのは、STEP1で扱う範囲だけです。しかも全員に関係します。まずここを固めてから、次のステップに進みましょう。

経費に上限はありません

「経費は売上の何割まで」「いくらまでなら大丈夫」という質問をよく見かけます。結論から言うと、法律で決められた上限はありません。

判断の基準はひとつだけで、その支出が事業を営むために必要だったかどうかです。必要であれば全額が経費になりますし、必要でなければ1円でも経費にはなりません。割合は結果として出てくる数字であって、目標にするものではないんですね。

そもそも、業種によって経費率はまったく違います。仕入れのある物販なら7割を超えることもありますし、在庫を持たないコンサルティングや執筆なら2割に届かないこともあります。「平均は何割ですか」と聞いても、意味のある数字にはなりません。

ただし、極端に経費率が高い状態が何年も続くと、税務署から見て目を引きやすくなるのは事実です。それは「割合が高いから駄目」なのではなく、事業として成り立っていない可能性を疑われるからです。説明できる中身があるなら、割合そのものを気にする必要はありません。

何が経費になるのか

勘定科目ごとに、個人事業主でよく使うものを並べます。

勘定科目具体例
地代家賃事務所の家賃、自宅の一部(按分)
水道光熱費電気・ガス・水道(按分)
通信費携帯電話、インターネット、切手
旅費交通費電車、バス、タクシー、出張の宿泊費
消耗品費文具、10万円未満の備品
接待交際費取引先との飲食、手土産、慶弔費
会議費打ち合わせの飲食
広告宣伝費広告出稿、名刺、チラシ
新聞図書費書籍、雑誌、有料記事
支払手数料振込手数料、決済手数料、各種サービス利用料
研修費セミナー、講習会
車両費ガソリン、駐車場、車検(按分)
減価償却費10万円以上の資産を年数で分けたもの
損害保険料事業用の火災保険、自動車保険(按分)

逆に、経費にならないものもはっきりしています。

所得税、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料。これらは経費ではありません。ただし国保と年金は社会保険料控除として所得控除で引けます。個人事業税と固定資産税、自動車税は経費になります。

生活費、家族への給与(届出をしていない場合)、自分への給与、健康診断や医療費、スーツ代。このあたりも原則として経費になりません。自分に給料を払うという発想自体が、個人事業主には存在しないからです。

10万円を超えるものは、その年に全額を落とせない

パソコンや機材を買ったとき、金額によって扱いが変わります。ここは間違えやすいところです。

10万円未満なら、消耗品費として買った年に全額を経費にできます。

10万円以上になると、原則は減価償却です。耐用年数に応じて何年かに分けて経費にします。パソコンなら4年、事務机なら15年といった具合です。

ただし個人事業主には、この原則を飛ばせる特例があります。青色申告をしていれば、40万円未満の資産は買った年に全額を経費にできます。これを少額減価償却資産の特例といいます。

この基準額は2026年4月1日に取得した分から、従来の30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。物価上昇を踏まえた改正です。年間の合計は300万円までという上限があり、こちらは据え置かれています。

なお、2026年3月31日以前に取得したものは従来どおり30万円未満が基準です。取得日で判定するので、年度をまたぐ買い物では注意してください。

もうひとつ、10万円以上20万円未満なら「一括償却資産」として3年で均等に落とす方法もあります。手間は増えますが、償却資産税の対象外になるという利点があります。

取得価額10万円・20万円・40万円で変わる経費処理の区分

家事按分の考え方

「家事按分」は「かじあんぶん」と読みます。自宅で仕事をしている場合に、家賃や電気代のうち事業で使った分だけを経費にする仕組みです。

対象になるのは、事業と生活の両方で使っているものです。

家賃は、仕事に使っている面積の割合で分けるのが基本です。60平方メートルの住まいのうち15平方メートルを仕事部屋にしているなら25%。部屋を専有していない場合は、使っている時間の割合で計算することもあります。

電気代は、仕事で使う時間や使用する機器から見積もります。1日8時間、週5日の稼働なら、24時間×7日のうち40時間で約24%といった計算です。

通信費は、携帯もインターネットも同じ考え方です。仕事とプライベートの使用時間や通信量から割合を出します。

車は、走行距離で分けるのが最も説明しやすい方法です。使用日数で分けることもあります。

割合の決め方に「正解」はありません。大事なのは、どうやってその割合を出したかを説明できることです。面積なら図面やメモ、時間なら稼働記録。根拠を残しておけば、数字そのものが多少前後していても問題にはなりません。逆に、根拠なく「だいたい半分」としているのが一番危ういです。

私の場合は、面積比で計算しています。サロンの事務作業に加えてブログの収益もあるので、パソコンを置いている仕事部屋が家全体の何パーセントを占めるかで按分しました。

根拠として使っているのは、引っ越しのときにもらった間取り図です。各部屋の面積が書いてあるので、そのまま割り算するだけで済みます。わざわざ測り直す必要もありませんし、第三者が見て納得できる資料が最初から手元にある状態になります。賃貸なら契約時の書類に入っていることが多いので、探してみてください。

50パーセントを超えないと経費にできない、わけではありません

家事按分について「50%を超えていないと認められない」という説明を見かけます。これは正確ではありません。

この話の出どころは、白色申告の場合の条文の読み方です。白色申告では「主たる部分が業務の遂行上必要」であることが求められていて、この「主たる部分」を50%超と解釈する運用があります。

一方で青色申告の場合は、業務に必要であることが明らかにされる部分について按分できます。割合が50%以下でも、合理的に説明できるなら問題ありません。自宅の一室を仕事に使っているなら、面積比が20%でも25%でも、それが実態なら構わないわけです。

これも、青色申告を選ぶ理由のひとつになります。

「バレない」という発想はやめたほうがいい

「経費はバレなければいい」という話を見かけることがあります。気持ちは分かりますが、この発想は間違いなく損をします。

まず、税務署が見ているのは領収書1枚ではなく、全体の整合性です。売上に対して経費が不自然に多い、前年と比べて特定の科目だけ急に増えた、事業内容と結びつかない支出が並んでいる。こうした違和感から入ります。個別の項目を隠し通せるかという勝負ではありません。

そして、否認されたときの負担が大きい。追加の所得税と住民税に加えて、過少申告加算税と延滞税がかかります。悪質と判断されれば重加算税です。しかも所得が増えれば、翌年の国民健康保険料も上がります。1年分で済まず、数年分をまとめて指摘されることもあります。

もうひとつ見落とされがちなのが、時間の消耗です。調査への対応、資料の準備、修正申告。事業を止めてこれに向き合うことになります。浮かせた金額に対して、失うものが大きすぎます。

グレーな支出を通そうとするより、取りこぼしている正当な経費を拾うほうが、金額としても大きくなることが多いです。

  • 家事按分をしていない
  • 領収書を捨てている
  • 事業用の口座を分けていないので把握できていない

このあたりを整えるだけで、たいてい数十万円単位で変わります。

青色申告で65万円を引く

青色申告を選ぶと、経費とは別に青色申告特別控除が使えます。2026年分は最高65万円です。

65万円を受けるための要件は3つあります。

1つ目は、複式簿記で記帳すること。単式ではなく、貸借対照表を作れる形式です。

2つ目は、確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付すること。

3つ目は、e-Taxで期限内に申告するか、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存すること。どちらか一方で構いません。

期限に遅れると、それだけで65万円が10万円に下がります。ここは厳格なので、申告期限だけは守ってください。

そして、青色申告をするには事前の届出が必要です。青色申告承認申請書を、適用を受けたい年の3月15日までに提出します。新規開業の場合は、開業から2か月以内です。この提出を忘れると、その年は白色申告のままになります。翌年からしか青色にできないので、開業したらまず出しておくべき書類です。

2027年から、控除の仕組みが変わります

ここが今いちばん重要な話かもしれません。

令和8年度税制改正により、青色申告特別控除が再編されます。改正法は2026年3月31日に成立しており、適用は2027年分(令和9年分)の所得税からです。2026年分までは現行の最高65万円のままです。

改正後は3区分になります。

控除額要件
75万円複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿の保存
65万円複式簿記+e-Tax
10万円上記に当てはまらない場合

注目すべき点が2つあります。

ひとつは、今65万円を受けている人が、自動的に75万円になるわけではないことです。75万円にはe-Taxと優良な電子帳簿の両方が必要で、現在はどちらか一方で65万円を受けられます。何もしなければ65万円のままです。

もうひとつは、現行の55万円の区分が廃止されることです。複式簿記で記帳していても、e-Taxを使わず書面で申告している人は10万円まで下がります。影響としてはこちらのほうが大きいでしょう。

「優良な電子帳簿」というのは、訂正や削除の履歴が残る、日付や金額で検索できる、といった要件を満たした電子帳簿のことです。対応している会計ソフトを使えば技術的な条件は満たせますが、事前に税務署へ届出を出す必要があります。適用を受けようとする年の法定申告期限までに提出するものなので、2027年分を狙うなら準備は2027年中です。

今の段階でやっておくとよいのは、e-Taxでの申告に慣れておくことと、使っている会計ソフトが優良な電子帳簿の要件に対応しているかを確認しておくことです。

会計ソフトは使ったほうがいい

ここまで挙げた要件を並べると、方向性が見えてきます。

複式簿記での記帳、貸借対照表と損益計算書の作成、e-Taxでの申告、そして2027年からは優良な電子帳簿。これらを手作業やエクセルでこなすのは、現実的ではありません。簿記の知識がある人でも、時間を事業以外に使うことになります。

会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込んで、仕訳の候補まで出してくれます。家事按分の設定も、割合を登録しておけば毎月自動で処理されます。e-Taxへの連携も組み込まれています。

私はマネーフォワード クラウド確定申告を使っています。選んだ理由は2つで、口座とカードの明細が自動で取り込まれることと、家事按分の割合を登録しておけば毎月そのとおりに処理してくれることです。青色申告の書類も、画面の案内に沿って進めるだけで出来上がります。

年間の利用料は1万円台からです。青色申告特別控除の65万円を取り逃がすことと比べれば、判断は難しくないはずです。所得税と住民税を合わせて15%の人でも、65万円の控除は10万円近い差になります。

事業用の口座とクレジットカードを分けておくと、会計ソフトの効果が一段と上がります。事業の取引だけが自動で流れ込んでくるので、生活費との仕分けをする手間がなくなるからです。

私も口座とカードの両方を事業用と生活用で分けていて、これをやっておくと会計ソフトに取り込んだ時点でほとんど仕分けが終わっています。開業のときに済ませておくと、あとから過去の明細をさかのぼって分類する作業が丸ごと消えます。

STEP0で納税用の口座を作る話をしましたが、事業用と生活用を分けるのも同じタイミングでやってしまうのがいいでしょう。

ここまでが、全員に必要で、しかも所得税・住民税・国保のすべてを減らす節税方法です。次のSTEP2からは、積み立てながら税金を減らす手段に入ります。

STEP2 共済で積みながら減らす

STEP2 共済で積みながら減らす

STEP1で経費と青色申告を整えたら、次は共済です。

ここから先は、お金が必要になるが消費されない方法になります。経費は支払った時点で手元から失われますが、共済は積み立てたお金が将来戻ってきます。それでいて、支払った年の税金は減る。個人事業主が使える節税のなかで、最も効率がいい部分です。

使えるのは2つ。小規模企業共済経営セーフティ共済です。名前が似ていて混同されやすいのですが、目的も税金上の扱いもまったく違います。

2つの共済は、性質がまるで違います

先に違いを押さえておきましょう。

小規模企業共済経営セーフティ共済
目的自分の退職金取引先が倒産したときの備え
税金上の扱い所得控除必要経費
国保への影響下がらない下がる
掛金月1,000円〜7万円月5,000円〜20万円
積立の上限なし800万円
元本割れ20年未満の任意解約40か月未満
小規模企業共済は所得控除、経営セーフティ共済は必要経費で、国民健康保険料への影響が異なる図

STEP0で触れたとおり、所得控除は国民健康保険料の計算に入りません。小規模企業共済は所得税と住民税だけが下がります。一方で経営セーフティ共済は必要経費なので、所得そのものが減り、国保も下がります。

同じ「共済」でも、効く場所が違うわけです。国保の負担が重い人にとっては、この差はかなり大きくなります。

小規模企業共済は、個人事業主の退職金です

会社員には退職金がありますが、個人事業主にはありません。それを自分で作るための制度が小規模企業共済です。運営しているのは国の機関である中小企業基盤整備機構、通称「中小機構」です。

掛金は月1,000円から7万円まで、500円単位で設定できます。上限まで払うと年間84万円。これが全額、所得控除になります。

節税額は税率によりますが、所得税と住民税を合わせて20%の人なら年間約17万円。33%の人なら約28万円です。しかも積み立てたお金は将来戻ってきます。

加入できるのは、常時使用する従業員が20人以下の個人事業主や会社役員です。商業やサービス業の場合は5人以下。一人で事業をしているなら問題なく入れます。

ただし対象外になるケースもあります。事業性が認められない不動産賃貸業、生命保険外交員、全日制の学生などです。会社員をしながら副業で事業をしている方も、加入できない場合があります。 中小機構は加入資格のない方として「アパート経営等の事業を兼業している給与所得者」を挙げていて、給与が主たる収入である場合は認められないことが多いようです。判断に迷うなら、申し込む前に中小機構へ直接確認してください。

出口をどうするかで、税金が変わります

小規模企業共済で最も大事なのは、いつ、どうやって受け取るかです。ここで税金の扱いが変わります。

廃業したとき、または65歳以上で15年以上納付したときに受け取る共済金は、一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得として扱われます。退職所得は税制上かなり優遇されていて、納付年数に応じた控除を引いたあと、さらに半分にしてから課税されます。

65歳未満で自己都合により解約した場合は、一時所得になります。退職所得ほどの優遇はありません。

そして注意すべきなのが元本割れです。任意解約の場合、納付期間が20年(240か月)未満だと、受け取る額が払った額を下回ります。 掛金を減額したことがあると、その分の期間計算も複雑になります。

つまりこの制度は、長く続ける前提で入るものです。数年でやめるつもりなら向いていません。

資金が必要になったら、解約せずに借りられます

「積み立てたら使えなくなるのが不安」という声をよく見かけます。ここは制度の作りがうまくできていて、解約しなくてもお金を借りられます。

掛金の納付月数に応じて、積立額の7割から9割程度が借入の枠になります。一般貸付なら年1.5%程度の金利で、無担保・無保証人。事業資金としてもつなぎ資金としても使えます。

金融機関から借りるより条件がいいことが多く、審査も簡易です。手続きは中小機構のオンラインポータルからできるようになっています。

これがあるので、「解約して元本割れする」という事態はかなり避けやすくなっています。資金が必要になったら、まず借入を検討してください。

なお、掛金は途中で減額もできます。ただし減額した分は、それ以降運用されないまま据え置かれます。 増額に比べて不利になるので、最初から無理のない金額で始めるほうが賢明です。月1,000円から始められるので、余裕が出てから上げていく形で構いません。

経営セーフティ共済は、経費になるのが強みです

こちらは本来、取引先が倒産したときに連鎖倒産を防ぐための制度です。ただ、掛金が全額必要経費になるため、節税の手段としても広く使われています。

掛金は月5,000円から20万円まで、5,000円単位。積立の上限は総額800万円です。

小規模企業共済との最大の違いは、必要経費になることです。所得を計算する段階で引かれるので、所得税・住民税に加えて国民健康保険料も下がります。STEP1の経費と同じ効き方をします。

加入できるのは、継続して1年以上事業を行っている個人事業主です。開業初年度は入れないので、この点はSTEP1との順番が逆になることもあります。

前納という仕組みもあります。1年分をまとめて前払いすると、その全額をその年の経費にできます。上限まで使うと、月20万円×12か月で年240万円。利益が大きく出た年に使える調整手段です。

経営セーフティ共済の落とし穴は、出口です

ここが一番注意すべきところです。

解約して受け取る解約手当金は、個人事業主の場合、事業所得の収入金額になります。 つまり、そのまま利益に乗って課税されます。

法人なら役員退職金と相殺するといった出口設計ができますが、個人事業主にはその手が使えません。800万円を積み立てて何も考えずに解約すると、その年に800万円の収入が乗ることになります。

掛金納付月数が12か月未満なら0円、12か月を超えると80%から始まり、40か月で100%に達します。

経営セーフティ共済の解約手当金の支給率。40か月以上で100%になる

対策としては、赤字の年、大きな設備投資をした年、廃業する年など、他の損失や経費と相殺できるタイミングに解約をぶつけることです。加入する前から出口を考えておく必要があります。

もうひとつ、2024年10月の改正で重要な変更が入りました。令和6年10月1日以後に解約した場合、解約日から2年を経過する日までに再加入して支払った掛金は、必要経費になりません。 かつては「解約して積立枠をリセットし、また経費にする」という使い方がありましたが、これは封じられました。

古い情報を載せたままの記事もあるので、この点は注意してください。

私はまだ、どちらにも入っていません

ここまで制度を説明してきましたが、正直に書いておきます。私自身は小規模企業共済にも経営セーフティ共済にも加入していません。

経営セーフティ共済にいたっては、この記事を書くために調べるまで存在を知りませんでした。個人事業主が使える制度として紹介されることが少ないみたいです。同じように知らなかった方も多いのではないかと思います。

小規模企業共済のほうは知っていましたが、入っていません。理由はSTEP0に書いたとおりで、開業初年度の納税資金が想定以上に重く、毎月の積立に回す金額を落として調整した局面だったからです。そこで新しく月々の固定支出を増やすのは、事業の体力に合わないと判断しました。

小規模企業共済は20年続けないと任意解約で元本割れします。経営セーフティ共済も40か月です。節税額の大きさに引かれて、続けられない金額で始めるのが一番まずい。 減額すればその分は運用されないまま据え置かれますし、途中解約すれば元本を割ります。

そのうえで、現時点では検討する段階に入っています。開業から1年は過ぎているので経営セーフティ共済の加入資格はありますし、事業のキャッシュフローも初年度より読めるようになりました。加入したら、申込の手順や実際の書類まで含めて別の記事に書きます。

制度を薦めておきながら自分は使っていない、というのは据わりが悪いのですが、使うべきタイミングが人によって違うというのがこの2つの制度の本質でもあります。余裕がないうちに始めるものではありません。

どちらを先に使うか

両方に加入することもできますし、資金に余裕があるならそれが理想です。ただ、どちらか一方から始めるなら判断材料は3つあります。

国保の負担が重いなら、経営セーフティ共済が先です。 必要経費なので国保まで下がります。所得が高いほど国保の負担は大きくなるので、効果の差がはっきり出ます。

将来の退職金を作りたいなら、小規模企業共済が先です。 受け取るときに退職所得として優遇されるので、出口まで含めた税負担が軽くなります。経営セーフティ共済は出口で課税されるので、あくまで課税を先送りしているだけです。

開業から1年未満なら、小規模企業共済しか選べません。 経営セーフティ共済は1年以上の事業継続が条件だからです。

迷うなら、小規模企業共済を月1万円程度から始めて、事業が安定してから経営セーフティ共済を足す。この順番が無難だと思います。

どちらも掛金の証明書が年末に届きます。小規模企業共済は「小規模企業共済等掛金払込証明書」、経営セーフティ共済は個人事業主の場合「掛金明細書」を確定申告に添付します。経営セーフティ共済は明細書の添付を忘れると経費として認められません。 会計ソフトを使っていれば添付漏れを防ぎやすいので、ここでもSTEP1の会計ソフトを使うべき話につながります。

次のSTEP3では、年金まわりを扱います。共済と同じく積み立てながら税金を減らす手段ですが、受け取り方と国保への影響がまた違ってきます。

STEP3 年金まわりを固める

STEP3 年金まわりを固める

個人事業主が老後に受け取れるのは、国民年金だけです。

満額でも月7万円ほど(2026年度は月70,608円)。会社員が受け取る厚生年金と比べると、かなり心もとない。しかもSTEP2で見たとおり、退職金もありません。だから自分で上乗せを作る必要があります。

使える手段は3つ。付加年金、国民年金基金、iDeCoです。どれも掛金が所得控除になるので所得税と住民税が下がりますが、STEP0で見たとおり国民健康保険料は下がりません。 そこはSTEP1の経費とは明確に違います。

上乗せの選択肢は3つあります

先に全体像を押さえておきましょう。

付加年金国民年金基金iDeCo
掛金月400円月6万8千円まで月6万8千円まで
受取額決まっている決まっている運用次第
受取時期65歳から終身60歳または65歳から60歳以降
元本割れしない早期に亡くなると可能性あり運用次第
税金上の扱い社会保険料控除社会保険料控除小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済、国民年金基金とiDeCoの共通枠、付加年金の3つに分かれた掛金の上限

ややこしいのが掛金の上限です。国民年金基金とiDeCoは、合わせて月6万8千円までという共通の枠を使います。どちらか一方に寄せることも、分け合うこともできます。

そして付加年金と国民年金基金は併用できません。 どちらか一方だけです。付加年金とiDeCoは併用できます。

付加年金は、まずこれから

月400円です。これを国民年金保険料に上乗せして払うだけ。

受け取れる額は「200円 × 付加保険料を納めた月数」で、これが毎年、生きているあいだずっともらえます。

たとえば40年(480か月)払い続けた場合。払う総額は400円×480か月で192,000円。受け取るのは200円×480か月で年96,000円です。2年で元が取れて、あとはずっと上乗せが続きます。

付加年金は受け取り始めて2年で納付総額を回収できることを示す図

これほど確実な制度はそうありません。しかも掛金は全額が社会保険料控除になります。

申し込みは、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口です。マイナポータルからも手続きできます。年金手帳か基礎年金番号が分かるものを用意してください。

ひとつ注意点があります。付加保険料を払うと、iDeCoの上限が千円単位で調整されて月68,000円から67,000円になります。 1,000円分の枠を使うことになるので、iDeCoを上限まで使いたい人は計算に入れておいてください。それでも付加年金の利回りを考えれば、こちらを優先する価値は十分あります。

なお、付加年金は第1号被保険者だけの制度です。 会社員や公務員、その扶養に入っている方は加入できません。会社員をしながら副業で開業している方も対象外になります。

国民年金基金とiDeCoは、枠の取り合いです

「どちらがいいか」という質問をよく見かけますが、同じ枠を分け合う関係だと理解すると考えやすくなります。

国民年金基金は、受け取る額が加入時点で確定します。1口目は終身年金なので、長生きするほど有利です。掛金は加入時の年齢と性別、選んだ型で決まります。

弱点は3つ。インフレに弱いこと。加入後に任意で脱退できないこと。そして口数を減らすことはできても、払ったお金は返ってこないことです。受け取る額が決まっているぶん、物価が上がっても増えません。

iDeCoは、自分で商品を選んで運用します。うまくいけば増えますが、元本割れの可能性もあります。60歳まで引き出せません。口座管理手数料が月200円前後かかります。

どちらを選ぶかの目安はこうです。

確実さを重視して、老後の収入を計算できる形にしておきたいなら国民年金基金。物価上昇に対応したい、自分で運用したいならiDeCo。判断がつかないなら、まずiDeCoを少額から始めて、必要に応じて国民年金基金を足す形でもいいと思います。

なお、STEP2の小規模企業共済はこの枠とは別です。小規模企業共済は月7万円まで、iDeCoと国民年金基金は合わせて月6万8千円まで。両方を上限まで使うと月13万8千円、年間165万6千円が所得控除になります。

iDeCoの上限が、2027年1月から上がります

大きな改正が決まっています。

第1号被保険者の上限が、月68,000円から75,000円に引き上げられます。 2027年1月の引き落とし分からです。国民年金基金や付加保険料と合算する仕組みは変わりません。

同じ改正で、60歳以降も70歳未満までiDeCoを続けられるようになります。現行では、個人事業主は原則60歳までしか掛金を出せません。ただし続けられるのは、60歳の時点ですでにiDeCoに加入している人などに限られ、老齢基礎年金やiDeCoの給付をまだ受け取っていないことも条件です。60歳以降の上限は、原則として月6万2千円になります。

掛金を増やしたい場合は、手続きが必要です。上限が上がっても掛金は自動では増えません。金融機関によっては2026年9月から事前受付が始まっていて、締切もそれぞれ違うので、証券会社や銀行からの案内を確認してください。事前受付に間に合えば、2027年1月の引き落としから増額した掛金で積み立てられます。

会社員の方の上限も同じタイミングで上がります。企業年金の有無にかかわらず月62,000円。副業で開業している方は、こちらの枠が適用されます。

iDeCoの掛金は、経費にはなりません

ここは間違えている人が多い部分です。

iDeCoの掛金は事業の必要経費ではありません。 小規模企業共済等掛金控除という所得控除です。事業の経費として処理すると、税務上の誤りになります。

事業用の口座から引き落としている場合、帳簿では「事業主貸」として処理します。事業のお金を個人のことに使った、という扱いです。

確定申告のときは、10月ごろに届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使って、確定申告書の該当欄に金額を記入します。国民年金基金と付加保険料は社会保険料控除なので、記入する欄が違うことにも注意してください。

国民健康保険料が下がらないのも、所得控除だからです。STEP0の表で確認してください。

出口が、小規模企業共済と重なります

ここが2026年から難しくなった部分です。

iDeCoを一時金で受け取ると退職所得になります。そして小規模企業共済の共済金も退職所得です。 両方を使っている個人事業主は、受け取り方によって税額が大きく変わります。

退職所得控除には、重複を防ぐ調整の仕組みがあります。近い時期に2つの退職所得を受け取ると、加入期間の重なる部分について控除が使えません。

そして2025年度の税制改正で、この調整の対象期間が延びました。2026年1月1日以後に受け取る分から、従来の「5年ルール」が「10年ルール」に変わっています。

順番によって必要な間隔が違うのもややこしい点です。iDeCoを先に受け取ってから小規模企業共済を受け取る場合は10年程度。逆に小規模企業共済を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合は、もっと長い期間の調整が入ります。

実務上のポイントは2つです。

ひとつは、両方を一括で受け取るならiDeCoを先にしたほうが間隔を短く済ませられること。もうひとつは、どちらかを年金形式で受け取れば、この調整自体を避けられることです。年金形式なら公的年金等の雑所得になるので、退職所得控除の重複には当たりません。

ただし、ここは所得の総額や他の年金との兼ね合いで最適解が変わります。受け取りが近づいたら、税理士に相談することを強くおすすめします。 数十万円単位で差が出る部分なので、相談料を払っても十分に見合います。

今の段階で覚えておいてほしいのは、「iDeCoと小規模企業共済の両方を使うなら、出口の設計が必要になる」ということだけで構いません。積み立てている最中にできることは多くありません。

私はiDeCoに入っていません

ここでも正直に書いておきます。私はiDeCoに加入していません。 積立はNISAを優先しています。

理由は資金の出し入れです。iDeCoは60歳まで1円も引き出せません。節税効果はNISAより明確に大きいのですが、開業してまだ日が浅く、事業のキャッシュフローが読み切れない段階で、20年以上動かせないお金を作るのは怖いと判断しました。

STEP0に書いたとおり、初年度は納税資金の見積もりが甘くて、毎月の積立額を落として調整しています。そういう局面で引き出せない積立を増やすのは、順番が違うと思っています。

NISAなら、必要になったときに売却して現金化できます。設備投資が必要になったとき、売上が落ち込んだとき、納税資金が足りなかったとき。引き出せるという一点が、今の自分には節税額より価値があるという判断です。

ただしこれは、事業が安定していない時期の判断です。キャッシュフローが読めるようになれば、iDeCoの節税効果は無視できません。上限まで使えば年間81万6千円、2027年からは90万円が所得控除になります。所得税と住民税を合わせて20%なら、それだけで年16万円以上の差になります。

iDeCoとNISAは対立するものではなく、順番の問題だと考えています。生活防衛資金と事業の運転資金を確保して、それでも余るお金が出てきた段階で、引き出せないほうに回す。その順番を守れば、どちらも使うことになります。

まず何から始めるか

3つの手段を並べましたが、着手する順番ははっきりしています。

1番目は付加年金です。 月400円で2年で元が取れる。これを使わない理由がありません。市区町村の窓口かマイナポータルで、今日にでも申し込めます。

2番目はiDeCoです。 月5,000円から始められます。2027年に上限が上がるので、今のうちに口座を作って仕組みに慣れておくと動きやすくなります。金融機関によって手数料と商品ラインナップが違うので、そこは比較して選んでください。

国民年金基金は、余裕が出てからでいいと思います。 途中で抜けられない制度なので、事業のキャッシュフローが読めるようになってからの判断で構いません。付加年金と併用できない点にも注意が必要です。

そして、STEP2でも書いたとおり、続けられない金額で始めないこと。 iDeCoは60歳まで引き出せませんし、国民年金基金は脱退できません。掛金は後から増やせるので、最初は小さく始めるほうが安全です。

次のSTEP4では、見落としやすい所得控除を扱います。専従者給与、扶養、医療費、ふるさと納税。すでに使える状態にあるのに取りこぼしている、という人が多い領域です。

STEP4 控除の取りこぼしを潰す

控除の取りこぼしを潰す

ここまでのSTEP2とSTEP3は、新しくお金を出す話でした。共済も年金も、掛金を払うから税金が減ります。

このSTEP4は違います。すでに条件を満たしているのに、使っていない控除をなくす話です。追加の出費なしで税金が減るので、本来なら真っ先にやるべき部分かもしれません。

そして意外と取りこぼされています。制度を知らない、手続きが面倒そう、自分は対象外だと思い込んでいる。理由はさまざまですが、確認するだけで数万円から数十万円変わることがあります。

2026年分から、扶養と配偶者の基準が変わりました

まず、前提となる数字が変わっています。

同一生計配偶者と扶養親族の合計所得金額の要件が、62万円以下になりました。給与収入だけなら136万円以下です。2025年分までは58万円以下、給与なら123万円以下でした。

配偶者特別控除の対象も、合計所得62万円超133万円以下に変わっています。

つまり、去年は扶養から外れていた家族が、今年は対象になっているかもしれません。パートで働いている配偶者や、アルバイトをしている子どもがいる場合は確認してみてください。ここを見落とすと、使えるはずの控除を丸ごと素通りしてしまいます。

給与所得控除の最低保障額も引き上げられているので、「103万円の壁」という言い方はもう実態に合っていません。2026年分は136万円で考えてください。

家族に給与を払う(専従者給与)

配偶者や家族に事業を手伝ってもらっているなら、青色事業専従者給与が使えます。支払った給与を全額、必要経費にできる制度です。

必要経費なので、STEP1の経費と同じ効き方をします。所得税と住民税だけでなく、国民健康保険料にも影響します。

ただし要件が厳しめです。

生計を一にする配偶者または親族であること。その年の12月31日時点で15歳以上であること。その年を通じて6か月を超える期間、事業に専ら従事していること。そして労務の対価として相当な金額であること。

「専ら従事」というのが曲者で、他に本業がある人は原則として認められません。パートに出ている、学校に通っている、といった場合は要件を満たさないことがあります。ここで判断に迷うようなら、実際の勤務状況を記録に残したうえで税務署に確認しておくと安全です。

そして届出が必要です。「青色事業専従者給与に関する届出書」を、適用を受けたい年の3月15日までに提出します。1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者を持つことになった場合は、その日から2か月以内です。

届出書には支給する金額の上限を書きます。書いた金額を超えて払うと、超えた分は経費になりません。金額を上げたいときは変更届出書を出す必要があります。少し余裕を持った金額で届け出ておくのが実務的です。

専従者給与と配偶者控除は、どちらか一方です

配偶者控除と専従者給与は同じ家族について両方は使えないことを示す比較図

ここが最大の誤解ポイントです。

専従者給与を払った家族については、配偶者控除も扶養控除も受けられません。両方は使えず、二者択一になります。

どちらが得かは金額次第です。一般の配偶者なら配偶者控除は最大38万円。専従者給与は届出の範囲内で設定できるので、38万円を超える金額を払えるなら、経費として引ける額のほうが大きくなります。

しかも2026年分は給与所得控除の最低保障額が74万円あります。年74万円までの給与なら専従者本人の給与所得は0円になるので、受け取る側に所得税も住民税もかかりません。

注意したいのは国民健康保険料の動きです。専従者給与を払うと事業所得は減りますが、同じ世帯の中で専従者の給与所得が増えます。国保は世帯単位で計算するので、世帯全体で減るのは給与所得控除の分だけです。年96万円を払った場合、世帯の所得が減るのは74万円分になります。

配偶者が勤務先の健康保険に入っている場合は、金額によって扶養から外れることがあります。世帯が国民健康保険なら、この論点はありません。

「専従者給与を0円にすれば配偶者控除が使えるか」という質問もよく見かけます。制度上、配偶者控除の対象から外れるのは「給与の支払を受ける」専従者なので、実際に支払っていなければ配偶者控除の対象になり得ます。ただし届出を出したまま支払わない状態は不自然なので、使う予定がないなら届出自体を出さないほうが良いです。

なお、専従者給与も給与なので源泉徴収が必要です。月額88,000円未満であれば源泉徴収税額は0円になりますが、給与支払事務所等の開設届出書は提出しておく必要があります。納期の特例を申請すれば、納付は年2回で済みます。

医療費控除は、10万円からではありません

「医療費が10万円を超えないと使えない」と思っている方が多いのですが、それは正確ではありません。

差し引くのは、10万円か総所得金額等の5%か、少ないほうです。総所得金額等が200万円未満なら、5%のほうが少なくなります。

たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引くのは7万5千円。医療費が8万円かかっていれば、5千円分が控除の対象になります。

医療費控除で差し引く金額は10万円か所得の5%の少ないほうであることを示す図

個人事業主は、開業初年度や売上の少ない年にこの条件に当てはまりやすいので、確認する価値があります。

対象になるのは、生計を一にする家族の分をまとめて計算できます。同居していなくても、仕送りをしているなど生計が一であれば合算できます。世帯で最も所得の高い人がまとめて申告するのが基本ですが、所得200万円未満の人が申告したほうが有利になるケースもあります。

手続きはマイナポータル連携が圧倒的に楽です。健康保険の医療費通知情報を自動で取り込めるので、領収書を集計する手間がほぼなくなります。ただし自由診療や市販薬は通知に含まれないので、そちらは別途集計が必要です。

歯科矯正については、噛み合わせの改善など機能上の必要があれば対象になりますが、見た目を整える目的だけなら対象外です。子どもの矯正は認められることが多く、大人でも診断書があれば通ることがあります。

セルフメディケーション税制という別の制度もありますが、医療費控除とは選択制で併用できません。対象は特定の市販薬で、年間12,000円を超えた部分が上限88,000円まで控除されます。医療費が少ない年の選択肢として覚えておく程度でいいと思います。

ふるさと納税は、節税ではありません

まず前提を揃えておきます。ふるさと納税は税金が減る制度ではありません。

自己負担2,000円を除いた寄付額が、所得税と住民税から差し引かれるだけです。払う金額の総額はほぼ変わらず、その代わりに返礼品が受け取れる。節税ではなく、税金の前払いに返礼品が付く仕組みだと理解してください。

個人事業主が知っておくべき点が3つあります。

ワンストップ特例は使えません。ワンストップ特例は確定申告をしない人のための制度なので、確定申告をする個人事業主は対象外です。寄付金受領証明書を保管して、確定申告で寄附金控除として申告します。

上限額が年末まで確定しません。会社員なら年収がほぼ読めますが、個人事業主は12月31日まで所得が確定しません。上限を超えた分は全額自己負担になるので、年末近くまで待つか、余裕をみて少なめにするのが安全です。

赤字なら意味がありません。控除する税金がないので、寄付額がそのまま自己負担になります。

上限額の目安は住民税の所得割額の約2割ですが、正確には事業所得から各種控除を引いた課税所得で決まります。各ふるさと納税サイトのシミュレーターは給与所得者向けのものが多いので、事業所得で計算できるものを選んでください。

なお、ふるさと納税は事業の経費ではありません。寄附金控除という所得控除です。事業用口座から支払った場合は、帳簿では事業主貸として処理します。

私はまだ、ふるさと納税をしていません

個人事業主になってからは、まだ一度もやっていません。

理由は単純で、今の所得だと旨みが小さいからです。上限額は課税所得に比例するので、所得が少ないうちは寄付できる枠も小さくなります。数千円から1万円程度の枠のために、上限を計算して、寄付先を選んで、証明書を保管して、確定申告で入力する。その手間に見合わないと判断しました。

会社員時代と同じ感覚でいると、ここで違和感が出ます。給与所得者は年収から上限がすぐ計算できて、ワンストップ特例で手続きも完結します。個人事業主はどちらも使えません。

事業が育って課税所得が増えてきたら始めるつもりです。制度として悪いわけではなく、自分の段階に合っていないだけという話です。

取りこぼしやすい控除の一覧

最後に、見落としやすいものを並べておきます。

控除見落としやすい点
社会保険料控除家族の国民年金を払った分も自分の控除にできる
生命保険料控除一般・介護医療・個人年金の3区分で最大12万円
地震保険料控除自宅が対象。事業按分した残りの家事部分
ひとり親控除2026年分から子の所得要件が62万円以下に。控除額は2027年分から38万円に引き上げ
勤労学生控除所得要件が89万円以下に引き上げ
雑損控除災害や盗難の損失。事業用資産は別扱い
寄附金控除ふるさと納税以外の寄付も対象になる

社会保険料控除は特に見落とされます。生計を一にする家族の国民年金保険料や国民健康保険料を自分が払っている場合、その全額を自分の控除にできます。子どもが20歳になって国民年金の納付書が届いたとき、親が払えば親の控除です。

生命保険料控除は、保険会社から送られてくる証明書を確定申告に入力するだけです。年末に届く封筒を捨てていないか確認してください。

次のSTEP5では、NISAを使った資産形成を扱います。ここまでとは違い、税金を減らす制度ではなく、増やした分に税金がかからない制度です。

STEP5 非課税で増やす

非課税で増やす

ここまでのSTEP1からSTEP4は、すべて税金を減らす話でした。経費を増やす、控除を積む、取りこぼしを拾う。方向はどれも同じです。

STEP5は違います。NISAは税金を減らす制度ではありません。

最初にここだけはハッキリさせておきましょう。

NISAを使っても、所得税は1円も減りません

よくある誤解から片付けます。

NISAで積み立てたお金は、経費にも所得控除にもなりません。年間360万円を投資しても、その年の所得税・住民税・国民健康保険料は1円も変わりません。

STEP2の小規模企業共済やSTEP3のiDeCoとは、ここが決定的に違います。あちらは掛金そのものが控除になりますが、NISAにはその仕組みがありません。

では何が非課税なのか。増えた分にかかる税金です。

通常、株式や投資信託で得た利益には20.315%の税金がかかります。100万円が120万円になったら、20万円の利益に対して約4万円が引かれる。NISA口座ならこれがゼロになります。

つまりNISAは、今年の税金を減らす制度ではなく、将来の税金を減らせる制度です。効果が出るのは増えたときだけで、増えなければ何も起きません。元本割れすれば、非課税の恩恵もありません。

節税という言葉でNISAとiDeCoが並べて紹介されることがありますが、効き方はまったく別物だと理解してください。

制度の形を確認しておきます

2024年から始まった新NISAの枠組みです。

つみたて投資枠成長投資枠
年間の上限120万円240万円
対象商品金融庁が選んだ投資信託など上場株式、ETF、投資信託など
買い方積立のみ積立でも一括でも可

2つの枠は併用できるので、年間で合計360万円まで使えます。

生涯で非課税にできる金額は1,800万円まで。うち成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。非課税で保有できる期間に期限はありません。

売却した場合、その分の枠は翌年に復活します。ただし当年中は戻らないので、年内の売買を繰り返す使い方には向きません。

2026年3月に成立した改正で、18歳未満へのつみたて投資枠の解禁、つみたて投資枠の対象商品の拡充、定期売却サービスの手数料の容認、口座の住所確認の廃止が決まりました。いずれも使いやすくする方向の改正で、既存の枠が減るものではありません。多くは2027年1月からの適用で、こどもNISAも2027年1月に始まります。制度の詳しい中身と枠の使い分けは、新NISAの基本と使い方にまとめています。

損失が出たときの救済はありません

NISAには弱点もあります。

NISA口座で出た損失は、他の口座の利益と相殺できませんし、翌年以降に繰り越すこともできません。

特定口座なら、A社の株で30万円の損、B社の株で50万円の益が出た場合、差額の20万円にだけ課税されます。損失が残れば3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺できます。

NISA口座はこの仕組みの外にあります。損は損のまま消えるので、他で出た利益と合わせることができません。

非課税というのは「利益が出たときに税金がかからない」という意味であって、損したときに救済があるわけではない。ここは押さえておいてください。

帳簿の扱いと、確定申告

個人事業主が迷いやすいのが帳簿の処理です。

事業用の口座からNISAの積立を引き落としている場合、勘定科目は「事業主貸」になります。事業のお金を個人のことに使った、という扱いです。経費ではないので、損益には影響しません。

そしてNISA口座の取引は、確定申告に書く必要がありません。非課税なので、そもそも申告する所得が発生しないからです。源泉徴収もされません。

ここが特定口座との違いです。特定口座(源泉徴収あり)なら、売却時に自動で税金が引かれて完結します。特定口座(源泉徴収なし)や一般口座なら、利益が出た年は確定申告が必要です。

個人事業主は毎年確定申告をするので、NISA以外の投資をしている場合は、扱いを間違えないよう注意してください。事業所得の申告に投資の損益が混ざると、申告そのものが誤りになります。

投資は経費になりません

「投資は経費になるのか」という疑問も多いようです。

株式や投資信託の購入代金は、経費ではありません。資産を買っただけなので、お金の形が変わっただけです。事業の必要経費にはなりません。

投資で出た損失も、事業の経費にはなりません。上場株式等の譲渡損益は申告分離課税で処理するもので、事業所得とは切り離されています。事業が黒字で投資が赤字でも、相殺はできません。

投資関連の書籍やセミナー代も同様です。事業の内容と直接結びつかないなら、経費として認められません。金融について発信するブログやメディアを事業として運営しているなら話は別ですが、その場合も発信という事業に必要な支出として説明できることが条件になります。

なお、株式や投資信託の売買は、取引の規模が大きくても原則として譲渡所得です。事業所得として申告できるものではありません。

iDeCoとNISA、どちらを先に使うか

iDeCoは掛金を入れるときに、NISAは増えたときに税金が軽くなることを示す比較図

STEP3で保留にした論点です。

節税額だけを見ればiDeCoが圧倒的に有利です。掛金が全額所得控除になるので、その年の税金が確実に減ります。上限まで使えば年81万6千円、2027年からは90万円が控除されます。NISAにはこの効果がありません。

ただしiDeCoは60歳まで1円も引き出せません。NISAはいつでも売却して現金化できます。

会社員なら毎月の給与が安定しているので、iDeCoを優先して問題ないことが多いでしょう。個人事業主は事情が違います。売上は月ごとに変動しますし、STEP0で見たとおり納税の請求は6月から8月に集中します。設備投資が必要になることもあれば、売上が落ち込む時期もあります。

ここで大事なのは順番です。

生活防衛資金、納税資金、運転資金を確保したあとのお金が投資に回せることを示す図
  1. 生活防衛資金 事業と家計が数か月止まっても耐えられる現金
  2. 納税資金 STEP0で書いた、売上から経費を引いた金額の2割から3割
  3. 事業の運転資金 仕入れ、設備、当面の支払い

この3つが確保できて、それでも余るお金が投資に回せるお金です。順番を飛ばして節税額の大きさだけでiDeCoを選ぶと、引き出せないお金を抱えたまま資金繰りに詰まることになります。

iDeCoとNISAの使い分けは、別の記事でさらに詳しく書いています。2026年12月の改正で上限がどう変わるか、国保や経費との関係、私がiDeCoを始めるかどうか夫婦で迷っている経緯まで、1本にまとめました。

私はNISAを優先しています

STEP3にも書きましたが、私はiDeCoに加入せず、積立はNISAでやっています。

理由は流動性です。開業して日が浅く、事業のキャッシュフローがまだ読み切れません。設備投資が必要になるかもしれないし、売上が落ちる月があるかもしれない。そういう段階で、60歳まで動かせないお金を作るのが怖いと判断しました。

実際、STEP0に書いたとおり初年度は納税資金の見積もりが甘くて、毎月の積立額を落として調整しています。あれがiDeCoだったら、減額はできても取り崩すことはできませんでした。

節税額は確かにiDeCoのほうが大きいです。税率20%なら年16万円以上の差になります。それを承知のうえで、今は引き出せることに価値を置いています。

事業が安定して、生活防衛資金と納税資金と運転資金が十分に積み上がったら、iDeCoに切り替えるか、両方を使うつもりです。どちらが正しいかではなく、事業の段階に応じて変わるという話だと思っています。

事業のお金で投資をしないこと

最後にひとつだけ。

事業用の口座に入っているお金を、そのまま投資に回さないでください。

売上として入金されたお金には、まだ払っていない税金と社会保険料が含まれています。STEP0で見たとおり、2割から3割は自分のお金ではありません。それを投資に回すと、6月に通知が届いたときに現金が足りなくなります。

そして投資は、必要なタイミングで必要な金額が用意できるとは限りません。納税の時期に相場が下がっていたら、損を確定させて売ることになります。

STEP0で納税用の口座を分ける話をしましたが、投資に回すのはそこを引いた後の、自分の取り分からです。順番を守るだけで、資金繰りの事故はかなり防げます。

次のSTEP6では、事業がさらに育ったときの選択肢を扱います。法人化の目安、マイクロ法人、そして税理士に頼む判断基準です。

STEP6 次の段階を知る

次の段階を知る

ここまでのSTEP1からSTEP5は、個人事業主のまま使える手段でした。

STEP6は少し性質が違います。事業がさらに育ったときに出てくる選択肢、法人化と税理士の話です。今すぐ必要な人は多くありません。ただ、どのラインを超えたら考えるべきかを知っておくと、そのときに慌てずに済みます。

先に言っておくと、この章の結論は「まだ早い人が大半」です。STEP1からSTEP5をやりきっていないうちに法人化を考えるのは、時期尚早だと思います。

法人化の分岐点は、課税所得800万円あたり

よく言われる目安が、課税所得800万円から900万円です。理由は税率の構造にあります。

個人の所得税は累進課税で、課税所得695万円を超えると23%、900万円を超えると33%になります。住民税10%を足すと、900万円超では43%です。

一方、法人税は中小法人なら年800万円以下の所得に15%、超えた部分に23.2%です。この15%は期限つきの特例で、今のところ2027年3月31日までに始まる事業年度が対象になっています。地方税を含めた実効税率で見ても、おおむね20%台前半から30%台前半に収まります。

つまり課税所得が800万円を超えたあたりから、法人のほうが税率で有利になりやすい、という話です。

ただし、税率だけで決まるほど単純ではありません。

税率以外に、変わることが5つあります

法人化で変わるのは税金だけではありません。

個人事業主法人
社会保険国民健康保険・国民年金健康保険・厚生年金(強制加入)
自分への給与払えない役員報酬として経費にできる
赤字の繰越3年(青色申告の場合)10年
赤字の年の税負担所得税・住民税の所得割は0円法人住民税の均等割が最低7万円程度
事務負担確定申告決算・申告・社会保険の手続き

社会保険が最大の論点です。 法人になると、社長1人でも健康保険と厚生年金に強制加入になります。保険料は会社と本人で折半ですが、どちらも自分が出すお金なので、実質は全額負担です。

国民健康保険より安くなるケースもあれば、高くなるケースもあります。国保は世帯の所得や人数で決まり、健康保険は役員報酬で決まるからです。ここは個別に計算しないと分かりません。

自分に給与を払えるようになるのは大きな変化です。個人事業主は自分への給与を経費にできませんが、法人なら役員報酬として経費にできます。しかも受け取る側では給与所得控除が使えるので、二重に効きます。ただし役員報酬は、原則として事業年度の途中で金額を変えられません。利益を見ながら調整する、という使い方はできない点に注意が必要です。

赤字でも税金がかかる点は見落とされがちです。法人住民税の均等割は、利益が出ていなくても年7万円程度かかります。

消費税の免税メリットは、ほぼ消えました

かつて法人化の理由として挙げられていたのが、消費税の免税期間です。資本金1,000万円未満で法人を新しく作れば、原則2年間は消費税の納税義務が免除されました。

インボイス制度が始まってから、この効果はほぼなくなっています。 取引先がインボイスを求めるなら登録せざるを得ず、登録すれば売上規模に関係なく課税事業者になるからです。

取引先が一般消費者だけで、インボイスを求められない事業なら、まだ意味があります。ただしその場合は、法人化そのものの必要性も薄いことが多いでしょう。

手続きと費用

会社の形は、実務上は合同会社か株式会社の二択です。

合同会社は設立費用が安く、登録免許税が6万円で、定款の認証もいりません。電子定款なら収入印紙代もかからないので、合計6万円台から作れます。決算公告の義務もありません。

株式会社は登録免許税15万円に、公証役場での定款認証の手数料(資本金などに応じて1万5,000円から5万円)が加わり、電子定款で作っても17万円から20万円程度かかります。取引先からの信用という点では有利です。

どちらも、設立後に個人事業の廃業届、法人の設立届、青色申告の承認申請、社会保険の加入手続きが必要になります。司法書士に登記を頼むと、さらに数万円から10万円程度が上乗せされます。

ここで注意したいのが、法人をやめるときのコストです。解散と清算の登記で数万円、官報公告で数万円、専門家に頼めばさらにかかります。作るより畳むほうが面倒なので、迷っているなら急がないほうがいいと思います。

マイクロ法人は、この記事では勧めません

個人事業とは別に小さな法人を作り、役員報酬を低く設定して社会保険料を抑える。いわゆるマイクロ法人と呼ばれる手法があります。

この記事では勧めません。 理由は3つあります。

ひとつ目は、2026年3月に国の対応が明確になったことです。 厚生労働省が日本年金機構に対して、いわゆる国保逃れへの対応に関する通知を出しました。社会保険の適用について、形式ではなく実態に基づいて判断することが明確にされています。社会保険料の削減を目的としたスキームは、重点的に確認される可能性があると指摘されています。

社長1人の法人が直ちに否定されたわけではありませんが、説明責任は明確に重くなりました。 実態のない法人ほどリスクが高まっています。

ふたつ目は、本業と同じ仕事を法人に移しても実態が作れないことです。 マイクロ法人が成立するのは、個人事業とは別の事業を法人でやっている場合です。同じ仕事を分けただけなら、実態がないと判断されても反論できません。

みっつ目は、順番の問題です。 STEP1からSTEP5に書いた手段を使い切っていないうちに、リスクのある手法に手を出す理由がありません。経費の見直し、青色申告特別控除、共済、年金の上乗せ、控除の取りこぼし。これらを全部やってから考えても遅くありません。

ネットやSNSでは「合法的な裏技」として紹介されていることがありますが、制度の運用が見直されている最中の手法だという点は知っておいてください。

税理士に頼む判断基準

最後に税理士の話です。税理士の話でいちばん気になるのは、やはり費用だと思います。

費用の目安はこのくらいです。

顧問契約なら月1万円から3万円程度、これに決算料として月額の4か月から6か月分が加わります。記帳も丸投げするなら追加費用がかかります。

確定申告だけをスポットで頼む場合は、10万円前後が目安です。売上規模と記帳の状態によって変わります。

頼むべきタイミングは、金額よりも状況で判断したほうがいいと思います。

税理士に相談するタイミングの目安(売上1,000万円・人を雇う・法人化を考える・税務調査の連絡)

売上が1,000万円を超えて、消費税の課税事業者になることが見えたとき(原則として2年前の売上で判定されます)。従業員を雇って、給与計算と社会保険が発生したとき。法人化を検討するとき。税務調査の連絡が来たとき。このどれかに当てはまったら、相談する価値があります。

逆に、一人で事業をしていて売上が数百万円、取引もシンプルという段階なら、会計ソフトで十分こなせます。年間で十数万円から数十万円かかる顧問料を払うより、その分を共済や年金に回したほうが効果が大きいこともあります。

無料で相談できる場所もあります。 税務署の相談窓口、青色申告会、商工会議所。確定申告の時期を外せば、税務署はかなり丁寧に対応してくれます。制度の解釈で迷ったときは、まずここを使ってみてください。

私はまだ税理士に頼んでいません

開業してから今まで、確定申告は自分でやっています。

理由は規模です。一人で事業をしていて、取引も複雑ではありません。マネーフォワードで記帳して、そのまま申告まで完結しています。今の段階で顧問料を払っても、得られるものより出ていくお金のほうが大きいと判断しました。

ただし、頼むラインは決めています。 売上が1,000万円に近づいて消費税が視野に入ったとき、あるいは人を雇うことになったとき。この2つのどちらかが来たら相談するつもりです。

消費税は計算が一気に複雑になりますし、給与計算と社会保険は間違えると従業員に迷惑がかかります。自分でやれる範囲を超えたら頼む、という線の引き方です。

STEP2とSTEP3で触れた出口の設計も、そのときに相談する予定です。iDeCoと小規模企業共済の受け取り方は、数十万円単位で差が出る部分なので、相談料を払っても十分に見合います。

次は補章です。ここまでとは逆に、やってはいけない節税を扱います。ネットで見かけるグレーな手法が、なぜ割に合わないのかという話です。

補章 やってはいけない節税

やってはいけない節税

ここまでの7ステップは、どれも法律が用意している制度を正面から使う方法でした。この補章では反対側、つまり「それをやると節税ではなくなる」ラインの話をします。

「節税 グレーゾーン」で調べると、うまくやれば経費にできるかもしれない、という書き方の記事がたくさん出てきます。手取りを少しでも増やしたい気持ちはよくわかります。ただ、個人事業主がつまずくのは、大がかりなスキームよりも、日々の経費や売上の扱いを少しずつ自分に甘くしてしまうところだと思います。

マイクロ法人についてはSTEP6で書いたので、ここでは経費の過大計上、家事按分の盛りすぎ、売上の除外の3つに絞ります。

節税と脱税のあいだにある「グレー」の正体

先に線引きを整理しておきます。

節税は、制度が認めている控除や経費を使って税金を減らすことです。脱税は、売上を隠したり架空の経費を作ったりして、事実と違う申告をすることです。ここまでははっきりしています。

グレーゾーンと呼ばれているのは、その間にある「事業のための支出かどうか、見方によって判断が分かれうるもの」です。覚えておきたいのは、グレーかどうかを最後に決めるのは自分ではなく税務署だということです。自分の中で「たぶん大丈夫」と思っていても、調査で説明がつかなければ経費から外されます。

判断の目安として、私は「その支出がなぜ仕事に必要だったのかを、記録を見せながら第三者に説明できるか」を考えています。説明できるならそれはグレーではなく経費ですし、説明に詰まるなら、おそらく経費ではありません。

節税・グレーゾーン・脱税の違い。グレーかどうかは記録で説明できるかで決まる

経費の過大計上:「仕事にも使っている」だけでは足りない

いちばん起きやすいのがこれです。よくあるのは次のようなパターンです。

  • 友人や家族との食事を、会議費や交際費にする
  • 家族旅行を「視察」「研修」として旅費にする
  • ほとんど私用の車やスマホの費用を、全額経費にする
  • 仕事ではほぼ使わない高額な物を、事業用として買う

食事や旅行が経費にならない、という意味ではありません。取引先との打ち合わせなら、相手と目的を記録しておけば会議費や交際費として扱えます。問題になるのは、実態が私用なのに、名目だけを事業に寄せてしまうことです。

リラクゼーション業でわかりやすいのは、他のサロンで施術を受ける費用です。技術や接客を研究するために受けたのなら経費として考えられますが、単に疲れていて身体をほぐしてもらったのなら、それは生活費です。同じ支払いでも、目的によって扱いが変わります。経費にするなら、何を見に行ったのかを帳簿の摘要やメモに残しておくのが最低限だと思います。

STEP1で整理した経費の考え方を、自分に有利な方向へだけ広げてしまう。過大計上はそういうものだと考えておくと、避けやすくなるはずです。

家事按分の盛りすぎ:割合より根拠

自宅で仕事をしている人は、家賃や光熱費、通信費の一部を経費にできます。これが家事按分です。

仕事とプライベートの両方にかかる費用は「家事関連費」と呼ばれ、国税庁の説明では、業務に直接必要だったことを明らかに区分できる場合に、その区分できた金額だけが経費になります。所得税の通達では、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定しつつ、50%以下でも必要な部分を明らかに区分できるなら、その部分を経費にしてよいとされています。

つまり見られるのは、割合の大きさよりも「その割合をどう出したか」です。「なんとなく半分」「ネットで50%が多いと見た」は根拠になりません。

私は家賃を面積比で按分していて、引っ越しのときの間取り図を根拠として保管しています。仕事で使っている部屋の面積を全体の面積で割っただけなので、聞かれたら図面を出せば説明が終わります。

光熱費なら使用時間、通信費なら仕事で使う時間やデータ量、車なら走行距離というように、費用ごとに筋の通る物差しを選んでおくと安心です。反対に、生活スペースとして使っている部屋まで作業場に数えたり、家にいない時間が長いのに電気代を大きく按分したりするのは、指摘を受けやすい盛り方です。

売上の除外:いちばん悪質

3つの中で、税務署から最も厳しく見られやすいのが、売上を申告から外すことです。経費は解釈の違いとして話し合える余地がありますが、受け取ったお金を載せないのは解釈の問題になりません。事実を隠した、と見られやすい行為です。

特に気をつけたいのは、現金で受け取る売上です。リラクゼーションのように現金払いがある業種では、「現金の分は記録に残らないから」という話を耳にすることがあります。けれど実際には、予約の記録、キャッシュレス決済の入金、来店数、仕入れや消耗品の量など、売上の規模は別のところからも見えてしまいます。

帳簿の側にもルールがあります。売上に関する帳簿を保存していなかったり、売上の記載が不十分だったりしたことが調査でわかると、申告漏れに対する加算税が最大10%重くなります。個人事業主の場合、2023年分の確定申告に対する修正申告などから対象になっています。

私は事業用と生活用で口座もカードも分けています。売上がどこに入ったのかを自分でたどれるようにしておくことが、わざとではない漏れを防ぐいちばんの方法だと思っています。会計ソフトに事業用の口座をつないでおけば、入金の記帳漏れにも気づきやすくなります。

見つかったら何が上乗せされるのか

申告の誤りが見つかると、本来の税金に加えて、次のようなものがかかります。

  • 過少申告加算税:追加で納める税額の10%。期限内に申告した税額と50万円のどちらか多い額を超える部分は15%
  • 重加算税:事実を隠したり偽ったりしたと判断された場合、過少申告加算税の代わりに35%(申告自体をしていなかった場合は40%)。過去5年以内に重加算税などを課されていると、さらに10%上乗せ
  • 延滞税:2026年中の期間は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを過ぎると年9.1%
  • さかのぼる年数:原則5年。偽りその他不正の行為があった場合は7年
申告の誤りが見つかったときの加算税の段階と、延滞税・住民税・国保への広がり

たとえば、経費を50万円多く計上していて、所得税が10万円少なくなっていたとします(所得税率20%として、ざっくり計算しています)。単純なミスと判断されれば過少申告加算税は1万円ですが、架空の領収書を作っていたなど、隠したり偽ったりしたと判断されると重加算税は3万5,000円になります。ここに延滞税が加わり、さかのぼる年数が長いほど負担は膨らみます。

さらに見落としやすいのが、所得税だけでは終わらないことです。所得が修正されれば住民税も計算し直しになり、50万円なら住民税だけでおよそ5万円増えます。国民健康保険料も所得をもとに決まるので、見直しの対象になります。国保は税金よりさかのぼれる期間が短く、原則2年ですが、そのぶん直近の年ほど確実に上がります。

この記事ではずっと「国保まで含めて手取りを考える」と書いてきましたが、それは悪い方向にも同じように働きます。経費を正しく記帳すれば国保まで下がる一方で、盛った経費が否認されれば国保まで上がって返ってくる、ということです。

間違いに気づいたら、先に自分で直す

ここまで読んで、「去年の申告、ちょっと怪しいかもしれない」と思った方もいるかもしれません。その場合は、早めに自分で直すのがいちばん傷が浅く済みます。

税務署から調査の事前通知が来る前に、自分で誤りに気づいて修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。延滞税は残りますが、加算税がつかないだけでもかなり違います。通知が来たあと、調査が始まる前に修正した場合でも、加算税は5%(一部は10%)に軽くなります。

反対に、経費に入れ忘れていて税金を払いすぎていた場合は、「更正の請求」という手続きで、原則5年以内なら取り戻せます。ただし国保の保険料は2年を過ぎると直せないので、払いすぎに気づいたら早めに手続きしたほうが得です。直すのは、税金が増える方向だけではありません。

攻めなくても、手取りは増やせる

グレーゾーンを攻める節税は、うまくいっても数万円、見つかれば加算税と延滞税、住民税や国保の見直しまでついてきます。割に合わないというのが、私の正直な感想です。

STEP0からSTEP6までの方法は、どれも堂々と使える制度で、それだけでも手取りは十分に変わります。判断に迷う支出が出てきたら、記録を見せながら説明できるかどうかを、ひとつの基準にしてみてください。それでも迷うときは、税務署の電話相談で確認するのがいちばん確実です。

税金の基本を一冊でつかみたい方へ

この記事では、手取りを増やす順番に絞って書いてきました。そのぶん、「そもそも税金にはどんな種類があるのか」「確定申告は何から手をつければいいのか」といった入口の話は、かなり駆け足になっています。

そこをもう少しゆっくり押さえたい方には、税理士の大河内薫さんと漫画家の若林杏樹さんの本が読みやすいと思います。税金の知識がほとんどない漫画家さんが、税理士さんに一つずつ質問していくマンガ形式で、経費の範囲や確定申告の流れを、つまずきやすいところから順に説明してくれます。

ひとつだけ注意があります。この本は2018年の発売で、インボイス制度や基礎控除の引き上げなど、その後の改正は入っていません。考え方をつかむための本として読み、具体的な金額や制度の条件は、この記事の各STEPで確かめてもらうのが安心です。

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